バヌアツ・クルーズを終えたところで、ぽれーるはかなりのトラブルと整備を必要とする箇所が発生していました。ウィンドベーンのラダーシャフト・サポートシャフトの折損(ちょうど1年前にはシャフトが折損)、オートパイロット油圧タンクからの作動油漏れ、ステイスルステーワイヤーの素線多数切れ、セールの小さな破れ数カ所、ウィンドラスの作動不安定、航法系統GPSの作動不良等、小さなものを含めると約30カ所のトラブルがありました。
小さな不具合や整備箇所は時間をみて対応することはできますが、部品が必要なもの、修理施設や修理スキルの必要なものについては、それなりの対応ボートヤード等で修理する必要があります。また、9月上旬にはオーストラリア・グレート・バリアリーフ・クルーズを共にするヨット仲間が待っていました。ポートビラでの修理も検討しましたが部品を取り寄せるだけでも約1ヶ月必要なことから諦めました。
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バヌアツ〜ニューカレドニア〜ブリスベン 航海 |
この海域でヨット等の本格的な修理が可能なのはニューカレドニアのヌーメアで、クルーズ計画でも予定していたところなので先ずはヌーメアに行くことにしました。ポートビラからヌーメアは約280マイル、南南西の方向にあります。途中、美しいロワイヨーテ諸島の直ぐ横を通過しましたが、ニューカレドニアのエントリーポート(出入国手続ができる港)はヌーメアのみです。これらの島に立寄って上陸することはできません。
また、ニューカレドニアを訪れる観光客の中で一番人数の多い日本人ビジターに対しても1ヶ月間のビザしか発行しません。(オーストラリア、ニュージランド、ヨーロッパ系等のビジターは3ヶ月ビザ)、そのビザの延長はかなり難しいと聞いていました。 ハバンナ・パスを通り、ポイント・コンセション湾で2日間休養を兼ねてアンカリングし、14日にヌーメアのオフェリナ湾でアンカリング、翌15日にモーゼル・マリーナで入国手続きを行いました。
バヌアツからニューカレドニアに来て一番違いを感じるのはあの蒸し暑かったポートビラと違って湿度が低く非常に過ごしやすいことと、視覚的にはニューカレドニア海岸にはバヌアツと比較すると椰子の木が少なく山肌が赤土で覆われているところが多いことでした。また、少し残念なことですが、モーゼル・マリーナを含む湾内はどぶ川のあのいやな臭いが漂っていました。
早速、ぽれーるの修理の調整とヌーメア市内の観光に出かけました。マリーナから約3km離れた湾を回ったところにボートヤードがあり、修理施設は整っていましたが、やはり、修理部品等のオーストラリア等からの取り寄せに約3週間かかり、修理アップまでは1ヶ月間をみる必要があることから結局ニューカレドニアでの修理も諦めました。
ヌーメア市内は日本人観光客が多いせいか、いたるところに日本語の看板や標示があり、市内を走るバスにも行き先が日本語で書かれているものを多く見かけました。街中で知り合った何人かの日本人観光客もマリーナのぽれーるに遊びに来てくれました。
ヌーメア市内を歩いているメラネシア系の現地人も白いソックスにスニーカー、服装もアイビー系のオシャレな若者を多く見かけ、バヌアツでのサンダル履きにTシャツ姿の若者とはかなり違っていました。ただ、バヌアツの人々は道端ですれ違う時もほとんどの人が挨拶をしてくれましたが、ヌーメアでは私から「ボンジュール」と話しかけてもほとんどの人は無言でむしろ変な顔をされました。
ニューカレドニアは、小説や映画の「天国に一番近い島」の舞台になったところで、ヌーメア市内は碁盤の目のように区画された道路にヨーロッパ調の美しい街並みとサン・ジョセフ大聖堂、ココティエ公園があり、周辺にもアメデ島、カナール島、イル・デ・パン島と美しい島々と観光地が多くあります。しかし、なぜかヌーメアの市内ではバヌアツのような目の輝きを持った人々に出会うことはできませんでした。
ぽれーるはマリーナのビジターズ・バースの奥に停泊していましたが、13日の午前、ほんの30分ほど近くのマーケットへ買い物に行っている間にぽれーるのデッキ上に置いていた愛用の自転車と買ったばかりのロープ100mが盗まれてしまいました。この時は、私だけではなく他のヨットからも自転車や無線機等、船の上に置いていたものが取られていたようです。マリーナにはセキュリティの担当者もおり、現地の人はなかなか入りにくい環境で、警察の担当者は多分フランス系の白人の窃盗団の仕業ではないかと言っていました。
マリーナではオーストラリアから来ていたカタマランのキャムとアーニー、パワーボートのモーリスとファエ夫妻にいろいろとお世話になり、彼等のリコメンドによりブリスベンの修理施設の整ったリバーゲート・マリーナへ行くことにしました。時間がなくてニューカレドニアの各地を回ることは出来ませんでしたが、ボートヤードのエンジンショップで出会った中国人のファンおばさんは私が捜している燃料フィルターを半日も自分の車に私を乗せて捜しまわってくれ昼食までご馳走してくれました。今度ニューカレドニアに来たときはゆっくりとニューカレドニアのいいところを案内してあげると言って別れ、ヌーメア市内でお土産屋さんを開いている森さんにもヌーメア市内が一望できるFOLの丘で偶然出会い、いろいろためになる情報を教えてもらいました。
また、私がニューカレドニアを出る前日に、日の丸を掲げたヨット「ジプシーローズ」がオーストラリア・ブリスベン近郊のニューポート・マリーナから着き、シングル・ハンドの清水さんにお会いすることが出来ました。清水さんは私と同じ神戸出身で元プロの船乗りだったそうです。ヨットはニューポート・マリーナで購入され日本国籍に変更してニューカレドニアに来られたそうです。
愛用の自転車等を盗られてしまったけれど、ニューカレドニアでのいい出会いの思い出をこころに留めて、オーストラリア・ブリスベンへ向います。