b. スリランカの思い出(その2)

 アーユーボーワン(シンハラ語で「こんにちは」、「こんばんは」「さようなら」「おめでとう」の意味、胸の前で手を合わせ「ユ」にアクセントを付けながら言います。)
コホマダ(「元気ですか」)  サニペン インナワ(「元気です」)

 ゴール港は2006年以降、24時間の警戒態勢がひかれています。ゲートには合わせて10名ほどの警察、ハーバーセキュリティー、Navyが土嚢を積み機関銃を備えものものしく警戒にあたっており、ゴール港やその付近では警備状況や施設関係の情報がゲリラへ流れるのを防ぐためか全面的に写真撮影が禁止されています。一度、ゴールの幹線道路の川にかかっている日本の援助によって造られた橋を撮影したところNavyの警戒員に見つかりカメラを取上げられそうになりました。
また、港内にも立哨が小銃を持って警戒にあたっており、明らかにヨッティーであると分っていても港内では要所要所で止められ、ゲートパスの提示を求められます。港内の海面には常に警戒艇が走り回っており、時々、夜中にゲリラのフロックメンを警戒して小型爆雷を水中に投込み、ヨットの中にいると「ドーン」という音と艇体に銃弾を受けた時のような衝撃を受けます。しかし、Navyの警戒員は小型爆雷の衝撃で浮び上がってくる魚を網ですくっていました。

 ゴール港のゲートを出たところには5、6台の小型三輪(昔のミゼットのような車)タクシーのツクツク(スリーホィーラーとも言う)とその運転手を含めた10人程度の若いスリランカ人がいつもたむろしています。彼等はヨッティーがゲートから出てくると必ずどこに行くかとか安い宝石店やマーケットを知っているので案内すると言って近づいて来ます。ゲートからゴールの街の中心地までは約2kmの距離あり、通常のツクツクの料金は高くても100ルピーですが彼等は平気で300〜500ルピーを要求し、あまり一般的でない10%ぐらいのチップも別に要求します。彼等は自分の勧めるお店にお客を連れて行くと紹介料をそのお店からもらうことができるからです。ある時などゲートを出て歩いていると「ヒデ! コンニチワ、イイトコロ、ショウカイスル」と片言の日本語で話しかけてきましたが、まったく面識もないスリランカ人でした。多分、ハーバーセキュリティーか誰かが私の名前をいくらかのお金で売渡したのではないかと思います。

 ゴールの街のお店やマーケットでもツーリストと見られるとかなりの高額な価格をふっかけられることがあります。そういうお店に対しては「エパ(いらない)」と言うと20〜30%値引した価格にまけ、お店を出ようとするとほぼツーリスト価格になります。なお、ツーリスト価格とはスリランカの一般の人が物を買うときの市価よりも何割か高く設定されている価格です。一般のスリランカ人から見れば、外国のツーリストやヨッティーは裕福な人々と映り、そのような人に対しては少し余分にお金を請求しても仏様の罰はあたらないと考えているようです。もちろん、私は通常料金にチップをプラスして渡す程度は心がけています。

 また、スリランカでも少しお金に余裕がある人たちが買物をしているスーパーマーケットでは日本と同じように価格が表示されており、時々、利用してスリランカにおけるものの価格の基準を把握するように心がけていますが、スリランカは私が今まで訪れた国の中で一番物価が安い国です。コロンボやゴールの繁華街を歩いていると片言の日本語を話しながら好青年に見える若者が「お金はいりません日本人が好きだからいいところに案内したい」と言って近づいて来ます。そして、お寺等に連れて行ってお祈りをしながら2004年のツナミでスリランカは大変な被害を受けたのでかわいそうな被害者にUS100ドル寄付してくださいと言って結局自分のためにお金を要求してきます。

 そういった人たちも結構敬虔な仏教徒であることが多く、このたかり屋的な精神と仏教徒としての気持のギャップは最後まで理解できませんでした。しかし、私がそういった要求を拒否すると彼らは結構諦めも早く今度会った時はいいところを案内し決してお金は要求しないと言って別れました。三輪小型タクシーツクツクを利用する時は最初に価格を決めて乗込みます。しかし、降りる時になると運転手は道が混んでいて早く目的地に着くために回り道をしたので、最初の約束した価格の倍額が欲しいと要求することもあります。

 スリランカの人々は食べ残しや紙くず、ビニール等のゴミを平気で道ばたや公共施設の中でも捨てています。町の中はゴミゴミしておりたくさんのカラスや野良犬等が群がっています。こういった人々も自分の家は結構綺麗にしており他人が敷地内にゴミなどを捨てると怒ったりします。ただし、食べ残しを道ばたに置くのは野良犬等に食べ物を与えるという生き物に対する施しの心からそのようにしているようです。一方、スリランカの子供たちはたいへんかわいく純粋でニコニコしており、道を尋ねるとわざわざ案内してくれても決してお金は要求しませんし、こちらが渡そうとしても受取りません。

 家庭でもスリランカの子供達は親から大切に育てられているようで、バスや列車に乗っていても親子連れを見るとその様子がよく分ります。また、スリランカの専門学校や大学の学生、一目でエリートらしいと思われる人々も親切です。しかし、一般的には大人になり生活がかかり出すとほとんどの人がお金に執心するようになるようで、特に都会にいる人はその傾向が強いようです。ちなみに、スリランカは英連邦の一国ですが国の名前「スリランカ民主社会主義共和国」と国際的には社会主義の国です。しかし、スリランカの人の宗教といい、お金への執心といい、また、人々の頭の中に残るカースト制、浮浪者等の多さからは決して社会主義の国だとは思われません。ただし、小学校から大学等までの教育費等は無料だそうです。